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©2009 MEDICMEDIA Co.,Ltd
自然の風景を抽象化したシリーズをこのカバーイラストで続けています。かたちを簡略化する過程で不必要なものを捨象し、残ったエッセンスがパターン認識に響くある種のコノテーションを生むような感覚。それがカッコ良かったり、可愛かったり、けっこう不健全な気持ち良さだったりして、わりあい日頃から馴染みのあるこの感覚には助けられることが多いです。抑揚を削りとった禁欲の中にひそむ意味解釈の迷宮のようなものなのか。直線や簡潔なカーブ、大ざっぱな面分割に、そんなことを感じるようになってけっこう経ちました。
ふり返って思えば、荒木伸吾作画のタイトルバックにも昔この感じがあったような… (今見ると線の情感のほうが気になります)密度を信じるなとか、形をわり切れとか、気持ちを入れ過ぎると艶がなくなるとか、そういうNHKのスポーツ実況のような、抑制された状況で生まれる感覚はやっぱ大事ですね。このイラストもせっせと描き込むより、あとから間引く作業の方に醍醐味を感じながら描いているしだいです。
ということで、これまでの4冊も含めこのシリーズをいつも冷静にデザインしてくれるのは Watermark の水野さん。今回からテーマを一新してスタートしました。この問題集とっても売れてるとのこと、嬉しいかぎりです。
MEDICMEDIA オフィシャルサイト
©2005 The Asahi Shimbun Company.
マスコミに入る。強い決意を感じるタイトルです。最近はマスコミという言葉はあまり使わなくなりました。マスコミュニケーションの略語が「マスコミ」ですが、どうやら言葉の普及もひと周りして飽きられたのか「マスメディア」に取って代わられたようです。話の流れによっては、これまた略して「メディア」でも通じます。つまりメディア業界と言ったらマスコミ業界のことを指します。
デザイナーやイラストレーターもマスメディア業界です。デザインもイラストレーションもマス状態の「機能」を指して言います。マスメディアそのものと言ってもいいでしょう。一品ものではなく「マス」なわけですから、イラストレーションとして使われた原画が一品ものでも、印刷などのマスの状態になって初めてイラストレーションと呼ばれるのが本当です。例えばダ・ビンチのモナリザをイラストレーションに使った美術館のポスターがあるとします。その原画のモナリザはイラストレーションではありませんよね。一回性がアートの命題であるように、イラストレーションにとっての「マス」もけっこう命題なのです。
©2008 RECRUIT CO.,LTD.
満を持してというのか、膨大な取材量と紙数のムック「ニッポンの仕事777」がリクルートより発売されました。こんなに労力が掛かる本はちょっとやそっとじゃ出せないかも知れません。ちなみにこの「777」はスリーセブンでなくトリプルセブンと読むようです。
本書は「仕事を見つける」ことと、そのために「何を学ぶか」ということの二つを探すためのカタログなのですが、それよりもまず掲載されている職種量に圧倒されてしまいます。それにしても今の仕事ってこんなにあるんですか。数が増えれば増えるほど価値基準も多様化し共通前提が希薄になっていく理由も頷けます。それでなくてもタコツボ社会、横のネットワークに敏感でないとますます世の中見えなくなりますね。
表紙ではいろんな働く人を描きました。その中で働いてる人たちの様子を覗いているのがこの左上の女性です。過去何度か描いているアイキャッチャーなので自分としても思い入れがあるんですが、何度描いても飽きないメタな魅力を持っています。これからも時々どこかで見かけるかも知れませんが、今後ともどうぞよろしくお願いします。
©2008 FUSOSHA
花粉症の季節ですが、作業中のくしゃみでツバだらけになったPCのモニターを今鼻をかんだばかりのティシューで拭いてしまったりして、ホントにこの時期は幾重にも憂鬱になります。この本はそんな憂鬱を吹き飛ばしてくれそうな一冊です。
森永卓郎さんといえば年収300万円で有名な経済学者ですが(森永さんの年収が300万円という意味ではありません)それだけでなく、B級コレクション、特にミニカーのコレクターとしても大変知られている方です。本書は夕刊フジの連載コラムをまとめたものだそうで、著者自身のコレクションの相当部分を網羅していているらしく、これまでその関係の本を何冊か出されているようですが、編集者の方曰く今回のが決定版とのこと。こんなものまで集めてるんだと、ぱらぱらとページを捲るだけでもその種類と量に圧倒されてしまいます。森永さん年収120万円の本も書いていますね。
さてこの本のカバーととびらにスーツ姿の森永さんを描いたんですが(ヤクルトの古田捕手ではありません)いろいろいじってるうちに、てっきりボツになったと思ってたセーター姿の著者の絵を発見しました。ミニカーを頭に乗せて愛でるプライベートの様子を想像して描いたものです。こんなふうに使われるとは聞いてなかったのでちょっと驚きました。装丁の小栗山さん、おまけ感のある楽しいデザインありがとうございました。
扶桑社ホームページで見る amazonで見る
©2007 Espre co.
最近虹の絵をよく描いています。虹は日本やフランスでは七色ですが、別の国では三色、またアフリカのどこかの国では十数色と認識されているそうです。すべて同じ虹なのに不思議ですが、こうした前提はすべて言語によって縛られているといいます。虹の色を七色に分けて語ることができる七種類の色の名がそこの国の言葉にあるから、そのようにたまたま分けているということなのでしょうか。
だとしたら、虹に色の境目がつけられる以前は、虹そのものが「空」とか「光」とかと境目なく語られていた時代が過去にあったかも知れないし、また、現在でも、虹とその他の現象を分けて語る習慣のない文化が場所によってはあるかも知れません。そう考えると虹を七色に分けて描く必然はないですし、空や光と区別せずあらゆるものと同質に表現する方法があってもいいわけで、虹なのか空なのか木なのか水なのか、境目なく繋がって見える物体Xのような風景があってもいいわけです。むしろホンライの自然の姿ってそういうものかも知れません。
ということで今日発売のecocoroの別冊「クルマエコ」というムックの表紙にまた虹を描きました。本の中面ではこの表紙絵の一部分が、空や木や水の境目とは関係なく切取られ再利用されています。
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