例によって告知が遅いんですが、渋谷にあるたばこと塩の博物館で「私の句読点」という展覧会が始まりました。公園通りのパルコの先を登ってNHKの方までお出かけの際はぜひお立ち寄りください。ちらしのデザイン和田誠さんです。
それはさておき、ここの前回の企画が「デザインの力_たばこにみる日本デザイン史」というもので、これが資料性に富んだとっても楽しい展覧会だったので、それについてちょっと書きます。明治初期の貴重な刻みたばこの現物や植民地時代を彷彿させるアメリカン・タバコのポスターから始まって、当時のたばこメーカーの宣伝合戦や印刷技術と図案との関係、代表銘柄のデザインの推移や売り上げ記録が、小咄のようなエピソードを織り交ぜながら展示され、飽きないように良く工夫してるなあと感心するのもつかの間、大戦後の占領期を脱してからがまた長く、有名輸入たばこのポスター、レイモンド・ローウィのピースのデザイン版下や、さまざまなパッケージデザインのコンペの経緯やボツ案、採用理由なんかも細かく説明されてたり、大阪万博の専売公社のパビリオン「虹の塔」にもコーナーを設け記録映像や模型で言及したり、高度経済を象徴するような各種記念たばこのグラフィック、60〜70年代のショッポやハイライト、セブンスターからキャスターといった広告媒体を含む隆盛期まで、途中で閉館時間が過ぎてしまい結局続きを見るのに三回通ってしまうほど内容の濃い展覧会でした。こうした説得力は本家本元こそが持ちえるリソースの賜物ですね。ただしスペースの関係で割愛された情報がかなりあると思いますから、その意味ではこの展覧会はダイジェストだったんでしょう。それにしてもこれで入館料100円というのは安すぎます!(褒めちぎっておりますがJTに肩入れをする謂れは特にありませんw)
これ展示中の私の作品。
現行「私の句読点」もどうぞよろしく。
©1994 Japan Racing Association
競馬はほとんどやりませんが当たればさぞ楽しかろうと思います。昔ダービーでブライアン…だかいう馬券を買って、友達の個展にお祝いで持って行ったことがありました。そしたらそれが当たったんですが、配当金が馬券の価格とほとんど変わらなかったのでその時は楽しいとは思えませんでした。それ以後馬券は買ってません。テレビで見てるときは良く当たります。
ということでJRAから出てるKEIBA CATALOGというフリーペーパーで昔こんなイラストを描きました。そういえばずいぶん前中山競馬場に行ったことがあって、馬券も買ってないしレースも観戦してないのに何しに行ったのかずっと腑に落ちず引っ掛ってました。もしかするとこのための取材だったのかも知れません。
絵には馬券売り場の混沌とした様子が描かれてます。よく見ると場内は二階まで吹き抜けになっていて、二階のベランダスペースは喫茶店になってます。さらに券売窓口の上にモニターがありレースの模様が放映されてますが、どうもそれがフォログラフィのように空中に投影され、場内のどこからでもレースやパドックの様子が見られるようになってるようです。女性や子どもも多いし、警備員らしき人まで馬券を買ってます。中山競馬場ってこんな感じだったのでしょうか?パドックでゆっくり歩く馬をずっと見てたり、駅までの帰り道が長かったわりに人の列が途切れなかったことは覚えてますが、馬券売り場の記憶はまったくありません。こんなふうに絵に描くことで記憶が消え去ることが良くあります。
※終了しました。関係者みなさまお疲れさまでした。
急遽!でもないか。5月2日の土曜日「1-8-2」というイベントでライブペインティングやります。またもや「絵画部」として参加するんですが、他の参加者の顔ぶれもかなり豪華なのでこちらをぜひご覧ください。モバイル版
ライブペインティングは久しぶりで90年代の半ばくらいまで良くやってましたが、そういえば最近は見に行ってばかりでした。今回は一部員として参加するので割り当てられる面積はそんなに大きくないだろうし、掛かる責任も大きくないはず。とはいえ油断はせずにしっかりやるつもりです。ちなみに絵を描くことが「絵画部」の主目的ではなかったのですが、現在の流れではそうなってますね。
場所は新宿区の大久保です。この場所っていうのがどうも東京宣伝美術社という映画などの看板を手がけている会社の自社ビルで、CETと並ぶくらい興味をそそるロケーションです。看板屋さんということでジェームス・ローゼンクイストみたいな感じで描ければと思いましたが、芸風が違うので多分そうはなりません。明日下見に行くので現場をちょこっと撮ってきます。
2009/5/2「1-8-2」@東京宣伝美術社
場所:東京都新宿区大久保1−8−2東宣ビル/地図
時間:17:00〜23:00
料金:2000円/special food有り
下見行ってきました。職安通り沿いのとても赴きのあるビルでした。外観も渋いけど中がまた素晴らしい。看板を描くための機能に満ちた空間からは、プロの仕事の余韻をひしひしと感じます。やああ、それにしても天井高いなあ。
何だかみんな楽しそうですけど、ここは近代社会の象徴ベルトコンベアがあるオートメーション工場です。チャップリンの「モダン・タイムス」を思い出す方も多いと思います。ひときは目立つ大きな女性が外見とはうらはらにとても丁寧な仕事をしてると思えば、逆にいちばん小さくて無表情だけどたいへん乱暴な人もいます。それから画面の一番下でこちらを見ている女性もいますね。各々「ソー」「ガー」「クルリ」といった擬態語がくっ付けられたこの三人が、どうやらお話の中心的な登場人物なのでしょうか。特にこちらを見てる女性は、この様子を外部から眺めるあなた自身の存在を気づかせ、あなたはその瞬間ハッとすることだろうと思います。実はあなたも部外者ではなくここでいっしょに働く仲間だったのです。絶対他者だと安心していたのもつかの間、今はただ休憩しているだけでもう5分もすればベルトコンベアの向こうの角の所定の位置に戻り、こちらに背中を向けて作業の続きに入るのかも知れません。
©2009 RECRUIT CO.,LTD.
というようなことを考えながら描いたこの絵は「じぶん未来BOOK」という働く先輩たちの経験談などを集めた高校生のための冊子です。この本の目玉は何といっても高校生が編集に参加していることですが、ページをめくってみると、その効果なのか全体にとても爽やかで活き活きとした印象がありました。高校生の時は池袋のロサ会館でゲームばかりやってて気づきませんでしたが、当時こんな本があったなら将来へ向けてもう少し早めに目標を立てられたことと思います。まあゲームも無駄じゃなかったんですけど。
©2009 ASPECT
80年代を振り返ることがちょっとしたブームのようです。日本のグラフィックデザインや広告の世界では、80年代って今振り返るとその特殊な感じが分りやすいのか、この時代の写真やイラストレーション、コピー等がメディア論や社会学的にも良く取りざたされます。豊かな経済が背景にあって商品の機能を説明しなくても皆がそれを欲しいと思えた時代に、広告界がイラストレーションにも「むずかしい説明はいらないよ」という、ある種の「気分」あるいは「記号」的役割を求めたことで独特な一時代をつくりました。
もちろん全てのイラストレーションがイラストレーターによって描かれているわけではありませんが、カルチュラルな情報を表現者が握ることで時代をリードし黄金期を築き上げた70年代のイラストレーションとは違い、さまざまな既存のイメージを融合させたり、描きたいことを限界まで進めデザインから逸脱したように見えたり、そうした実験的というか何でもありというか、とにかく無数の表現が媒体を縦横に飛び交っていたのが80年代でした。そしてイラストレーションや、イラストレーターという職業にひとまとめのイメージがあったのも、この時代までだったと今振り返って何となくそう思えます。
さてこの本では、この時代を席巻した「ヘタうま」という現象について中ザワヒデキ氏と私が対談をしています。「ヘタウマ」ではなくカタカナ+平仮名の「ヘタうま」で元祖はテリー・ジョンスンです。この中での私の意見は、「ヘタうま」の意味がずいぶんと広がったことで、つまり本来の核心部分を捨てていくことと引き換えに、「ヘタうま」はポピュラーになっていったというものです。逆に意味の難しさやきわどさを残したままでは、とてもあそこまでは流行しなかったと考えます。これに対して中ザワ氏の意見は「ヘタうま」をもう少し広く別角度から捉えたユニークなものとなりました。
この「ヘタうま」を始めとする80年代の現象が私たちに与えた影響ははかり知れなく、各分野の後進の表現者がさまざまなトリビュートを寄せていて、この本の楽しみのひとつとなりました。掲載された図版もきれいで通なものばかり。なかなかに贅沢な一冊となっております。最後に、この本のイラストレーションは確かに80年代のものに違いありませんが、イラストレーターご本人は今も現役で活躍してる方ばかりなのでお間違えのないように。
※出版を記念してトーク&サイン会がおこなわれます!
日時:2009年3月19日(木)19:00−20:00
場所:NADiff a/p/a/r/t 地図
出演:スージー甘金(イラストレーター)
:中ザワヒデキ(美術家)
:小田島等(イラストレーター、デザイナー)
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