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※初日のギャラリートーク、美學校でのトークを終了しました。
今回のテーマでもある80年代の話についてご興味のある方は、
この本の日比野克彦氏インタビューやコンペティションの項
等々を読んでいただくとけっこう参考になると思います。
それから「取り組んでいるのは絵だけの問題であるはずがない」
という言葉で、トークを結べたことがとっても良かったです。

今日から美學校主催「ギグメンタ_都築潤×中ザワヒデキ展」はじまりまーす!以下ステートメント&トークの予告です。分かりやすく書こうとしたら、ちょっと赤裸々風味になりました。

小中学校の時からイラストファンだったぼくが、それとは関係なく美術大学に入ります。ディスプレイや空間演出の分野なら、勉強すればがっぽり稼げると思ったからです。その後もイラスト鑑賞は、映画のチラシなどをくすねては趣味で続けていたので、パロディ展やグラフィック展というPARCO系の公募展も、その流れで見にいってました。いわゆる公募展ブーム、80年代グラフィズムの時代に突入します。これを背景に突然現れたのが日比野克彦でした。美大生だったぼくは、この「グラフィック展」という名前にもかかわらず「アート」と呼ばれたジャンルにたいへん興味をもち、せっせと応募を繰り返します。日比野のようなアーティストになるためでした。そして入選もしたし、受賞もしました。

しかしほどなく「少年アート」という本を友だちに紹介されます。そこには、今流行っている公募展ブームはアートとは無関係である、といった意味のことが書いてありました。そしてこの本に書いてあることがアートなら自分にはぜんぜん向いてないと思い、目標をアーティストからイラストレーターに簡単に切り替えます。この本のいう「アート」が、とても難しい世界のものに思えたからです。それ以降ぼくはずっとイラストレーターであり、イラストレーションを描くことを生業としてきました。これは今も変わりません。

さてイラストレーションはビジュアルコミュニケーション(ちょっと前ならグラフィックデザインでよかったのだけど)のパートであって、複製メディアや大量生産を前提としたものづくりです。これは成立の経緯からしても、経済圏からしても、アートとは別ものです。まあアートやデザインの定義は広げて語ることもできるのですが、それは置いとくとして、つまりぼくはいわゆるアーティストとか美術家ではなく、ビジュアルデザイン分野のイラストレーションというパートを専門にあつかう、一種の職人だということをとりあえず言っておきます。

ところが1996年頃にPCで絵を描き始め、しばらくしてある問題に気づきます。そして2001年にその研究発表のような個展「VERVE」を開きます。ここで登場するのが中ザワヒデキです。

2001年当時ぼくは、この問題を解決すべくVERVE作品を納めた大型のポートフォリを作成し、解決してくれそうな人に見せて回っていました。その最後にアポって会ったのが中ザワ氏でした。中ザワ氏とは80年代のコンペ仲間だったのですが、訳あって10年間まったく会っていませんでした。しかしこの再会を機に、大きないくつかの問題は「ベクターvsビットマップ」という呼び名に集約され、以降この問題を共有することになります。そしてぼく自身は、この問題とイラストレーションを分けて考えるようになります、というより考えられるようになりました。この「分けて考える」というのが、なかなか理解されません。

イラストレーションのことを考える時は徹底してそれを考えるし、自分が関わったデザインやメディア上の計画を成功させたいと思っています。ですからこれと絵の問題とはまったくの無関係、いやそれだけでなく、絵の問題をイラストやデザインに持ち込むことはむしろ弊害であるとさえ思います。そんなこと仕事に持ち込んだりしたら、課業の邪魔だし神経も保たないでしょう。こうした状況下で、自分の中の「ベクターvsビットマップ」は「絵一般の問題」へと段階的に移行します。

えーと長くなったので結論を言うと、展覧会主旨には「イラストレーションからアートの世界まで横断的に活躍してきた…」とありますが、この言い回しは誤解をまねきます。少なくともぼくは横断的に活躍してません。ぼくが言う「ジャンルの枠を外す」というのは、ジャンル横断的に活動することではなく、ジャンルの枠を外した横断的な「絵の観かた」をしているということです。ジャンルを越えるのは自分ではなく「絵」の方であって、すべての絵はこの「絵一般の問題」のもとに相対化されるという意味です。

ざっくばらんに言うと、イラストレーションも絵の問題も両方面白い。しかしその面白さがまったく違う。後者に関しては面白いなどと言ってられないフェーズもありますが…。くわえてよく言われる、イラストはお金のために描いているだけで俺が本当にやりたいのはアートだ、的な話とはじぇんじぇん違いますよ、念のため。ではよろしくお願いしまーす。
(敬称略)



日程: 2013年4月15日(月) - 4月20日(土)
時間: 10:00 - 18:30(最終日17時まで)
会場: 文房堂ギャラリー(東京都千代田区神田神保町1-21-1 文房堂ビル4F

《ギャラリートーク》
初日4月15日に美術史家の石井香絵さんをゲストに招き
ギャラリートークを行う予定です。是非お越しください。

ギャラリートーク第1部:17:30-18:30 会場:文房堂ギャラリー
ギャラリートーク第2部:19:00-20:00 会場:美学校
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