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80年代を振り返ることがちょっとしたブームのようです。日本のグラフィックデザインや広告の世界では、80年代って今振り返るとその特殊な感じが分りやすいのか、この時代の写真やイラストレーション、コピー等がメディア論や社会学的にも良く取りざたされます。豊かな経済が背景にあって商品の機能を説明しなくても皆がそれを欲しいと思えた時代に、広告界がイラストレーションにも「むずかしい説明はいらないよ」という、ある種の「気分」あるいは「記号」的役割を求めたことで独特な一時代をつくりました。
もちろん全てのイラストレーションがイラストレーターによって描かれているわけではありませんが、カルチュラルな情報を表現者が握ることで時代をリードし黄金期を築き上げた70年代のイラストレーションとは違い、さまざまな既存のイメージを融合させたり、描きたいことを限界まで進めデザインから逸脱したように見えたり、そうした実験的というか何でもありというか、とにかく無数の表現が媒体を縦横に飛び交っていたのが80年代でした。そしてイラストレーションや、イラストレーターという職業にひとまとめのイメージがあったのも、この時代までだったと今振り返って何となくそう思えます。
さてこの本では、この時代を席巻した「ヘタうま」という現象について中ザワヒデキ氏と私が対談をしています。「ヘタウマ」ではなくカタカナ+平仮名の「ヘタうま」で元祖はテリー・ジョンスンです。この中での私の意見は、「ヘタうま」の意味がずいぶんと広がったことで、つまり本来の核心部分を捨てていくことと引き換えに、「ヘタうま」はポピュラーになっていったというものです。逆に意味の難しさやきわどさを残したままでは、とてもあそこまでは流行しなかったと考えます。これに対して中ザワ氏の意見は「ヘタうま」をもう少し広く別角度から捉えたユニークなものとなりました。
この「ヘタうま」を始めとする80年代の現象が私たちに与えた影響ははかり知れなく、各分野の後進の表現者がさまざまなトリビュートを寄せていて、この本の楽しみのひとつとなりました。掲載された図版もきれいで通なものばかり。なかなかに贅沢な一冊となっております。最後に、この本のイラストレーションは確かに80年代のものに違いありませんが、イラストレーターご本人は今も現役で活躍してる方ばかりなのでお間違えのないように。
※出版を記念してトーク&サイン会がおこなわれます!
日時:2009年3月19日(木)19:00−20:00
場所:NADiff a/p/a/r/t 地図
出演:スージー甘金(イラストレーター)
:中ザワヒデキ(美術家)
:小田島等(イラストレーター、デザイナー)
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