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©2009 CYZO Inc.

久々のサイゾーですけどその前に…。映画のポスターやチラシのイラストレーションは種々ありますが、その描き手で巨匠と言われるのひとりにロバート・マクギニスがいます。最近の日本映画はレトロ感覚の作品が多く、ポスターのビジュアルにこのマクギニスボブ・ピークのような、いわゆるアメリカン・イラストレーションの手法がリバイバルされていて、こちらとしてはとても楽しい状況です。最近でも「K-20」という映画のポスターを、またもや出たけど…それにしても良く描けてるなあ、なんて感心して見てたんですが、ところがこれ、本家本元のマクギニスが描いていたんですねえ驚きました。

ただこの絵では、この人独特の軽妙さがないところがちょっと気になりました。筆致が見えないせいか、影が単調だからか、構成か、理由はいろいろありそうですが、とにかく詰め過ぎというか丁寧に描きすぎてる気はします。しかしまあマクギニスにしてもピークにしても、こちらが期待してた表現スタイルって、彼らにとってはとうに飽きてることだったり、その頃の画材の発達状況で当時はしかたなくそう描いてただけだったりすることもよくあるわけで…いや、これだけの大御所に注文つけるなんてそもそも妄言でしたね。それはさておき「描きかけ」や絵具の「筆致」のカッコ良さにはやっぱり魅力があって、職業柄どうしてもこんなふうに興味を惹かれてしまいます。

 

さて、サイゾーでは毎度のことながら無軌道に楽しく描かせてもらってまして、今回はこんな三大怪獣の絵をIllustratorで描きました。これで何が説明したいのかというと、CGのドローツールでペインティングを実現するには「描きかけ」や「筆致」がポイントになるのではという予感が以前からあり、このことを考える上で前述のアメリカン・イラストレーションの手法がたいへん参考になったというわけです。そしてベクター方式であるドローツールの場合この「描きかけ」や「筆致」に相同するのが「オープンパス」だということに気がつきました。

ではなぜペイントツールではなく、わざわざドローツールでペインティングをやる理由はというと、まず解像度に縛られることがなく、なおかつ全て色指定という、イラストレーションにとって最もフレキシブルな原画が描けると思ったからです。このことは画素をつくる、つまりペイントツールでいうところのピクセルを、ドローツールのパスで構築するという考えに発展します。そしてその後は「イデア論 vs 原子論」の二項対立という、自分の仕事にとってはほとんど必要のない領域まで考えざるを得ない状況となってしまいました。悩みがいのある楽しい問題とでも言いましょうか。

話は変わりますが、アニメーターの木村圭市郎ボブ・ピークに影響され、あのダイナミックなタイガーマスクの原画が生まれたとのこと。感慨があるというか、他人ごととは思えないエピソードです。

最後に、日本ガレージ界の重鎮にして随一のアメリカン・イラストレーションの描き手&グラフィックデザイナー&DJ、ジミー益子のオンライン展覧会レトロスペクティヴ。ゆかりの人々によるコメントも掲載されてます。残念なことに2/21から14日間の期間限定。

※レトロスペクティヴは好評のうちに終了しました

©2008 The Yomiuri Shimbun.

これは就活の冊子ですが、ここ何年か「お仕事」関係の依頼がわり合いあって、会社環境に突入する男女のためのガイダンスのような記事を良く読んだりします。その中に必ず、新しい環境での人間関係をアドバイスしようという内容のものがあったりして、これを読み比べるとけっこう面白いことに気づきました。

最初は、先輩や同僚にはいろんなタイプの人がいるなと感心したり「上司を手玉に取る方法」をホントかあ?と疑ったり、そうことを当事者でもないのでへらへら気軽に読んでたんですが、読み比べてるうちにタイプ分けのパターンが見えてくるんですね。考えてみれば「タイプ」というからにはそのバリエーションは数種類に絞られてるわけでして、世の中そうとう複雑なはずなのに限定された数種類で説明してるのがずいぶん気になってくるんです。

だとすれば、複雑すぎるこの時代逆に人付き合いも素でやってると煩わしくなる一方で、そういう場ではキャラクターを演じるのがあたり前になっていて、という理由で人間によって演じられるキャラが数種類あるだけ、ってふうに考えた方が何だか自然じゃないかという気がしてきました。つまり、こういう演技はこう解釈しよう、こう演じ返そう、というアドバイスに見えてくる。星占いを読んでてもこんな入り組んだこと思いませんでしたけど…。

みんながみんな空気を読む時代ってこういうことなんでしょうかね。これをコミュニケーションの進歩と称揚するのか衰退と嘆くのか、はたまたある限定された状況でのみ活用すべき知恵と捉えるかで、この先楽しくやってけるかどうかの分かれ目のような気さえしてきます。なるほどそういうガイダンスも、もうすでにありそうな気がしてきました(笑)


このカバーデザイン、上方に目がドローイングされてますが下方にはモデルの顔写真が構成され、そこに施されたパスが上下のイメージを繋いでます。デザインしたのは浜田武士さんです。

浜田さんには数年前に tiger magazine を見て、すぐに会っていろいろと話を聞かせてもらったことがありました。記憶はおぼろげですが、確かインタラクティブのアイデアを作品にしたいので手伝ってほしいとか何とか、そんな不躾な相談に乗ってもらったように覚えてます。それが数年後 nike play の仕事まで繋がるわけで、こういうのはグルグル廻って思いがけない方向へ発展するものだなあ、とつくづく感じました。

ネット上でその作品が気になったらメールを送って作者に会い、そこから何か面白い方向に発展することがあります。ネット上で SNS が盛んになってからこういう機会は増えたんじゃないでしょうか。でも当時はお互い何者かよく判らないままだったりして、今よりもスリルがあったかも知れません。
さて、これは私が描いた古木の絵です。



この絵は tiger magazine の issue12 に載ってます。展覧会用に描いたプリント作品で、畳一畳分くらいの大きさがありました。もともとはパスで描いたものを、画像にして素材として tiger にサンプリング、そのページから私のサイトにリンクが掛けられ、これら一連のイメージを元にルーペマシーンという作品を手伝ってもらい、確かそのお礼に似顔絵を描かせてもらって、それがこの本の表紙のデザインに再構成され…と、これもけっこう思いがけない循環でした。
 

※なんとか無事に終了しました

CETとは「セントラル・イースト東京」のことです。今年で6年目、もう始まってます。これまで展示やトークイベント、人生相談などに参加してきました。東京の東側エリア、日本橋、浅草橋を中心に点在する空きビルを期間限定で貸してもらって、展示やイベントを開催するというオルタナティブな催しです。東東京の町おこしみたいなものと思ってください。とはいえこの活動の中からは「東京R不動産」のようなユニークなプロジェクトも生まれてる訳ですから侮れません。そして今回はあのピエール・バルーフリーマーケットに出品するという、にわかには信じがたい事態となっています。

さて今年に入って絵画部というのをはじめました。絵について話し合うのが主な活動ですが、それが高じて美学校で講座を持つこととなり、このたび部員一同集まって公開制作をする運びとなりました。金融危機を憂うスタイリストツヨポンによって仕掛けられた黒人コスチューム&トン子ちゃんを、定められた日程で描ききらなければならないという条件の上、各々日々の仕事があるのため合間を縫って作業しなければならず、いつ描きに行けるか分からないという大変不安なミッションです。せっかく見に行ったのに誰もいなかったとの苦情がさっそく出ておりまして、こうして告知していながら心苦しい次第です。

10日が中間講評、12日に展示&講評会をおこなう予定なので、この両日の活動時間18:00〜22:00は部員全員そろっているはずです。よろしければそのタイミングでお立ち寄りください。なお部室まではとても迷いやすい道のりとなっています。私は三度迷いました。念のため地図を二種類リンクします。

部員:佐藤直樹×マジック・コバヤシ×池田晶紀×小田島等×都築潤
場所:東京都中央区日本橋大伝馬町15-3内田ビル地下 地図1地図2
 

※巡回展も含め終了しました

12月5日からペーターズギャラリーで「ことしの仕事展」が始まります。各々のイラストレーターが今年の仕事をひとつピックアップして、その原画といっしょに媒体を展示するという企画です。媒体とはいわゆるマスメディアの複製物のことで、ポスターだったり雑誌の紙面だったり、ピックアップされた仕事によってさまざまな種類が展示されるものと思われます。そしてイラストレーションとは原画ではなくこの複製物の方だというのが私の考えです。

イラストレーションつまり「図版」として使われる絵の供給者であるイラストレーターの職能は、その媒体に対してビジュアルをアジャストさせるアイデアや技術だと考えられます。しかしその仕事の性質が、アドバタイジングのアートディレクターシステムのように分業的要素が強ければ強いほど、アイデアの主要部分であるデザイン計画のほとんどがクリエイティブディレクターやアートディレクターに委ねられることになります。もちろんイラストレーターがアートディレクターを兼ねていれば話は別ですが。

逆にその要素が弱いのが出版の挿絵やカットの仕事かと思います。結果的にどちらの世界が合うかはイラストレーターの性格によって違うでしょうし、そのイラストレーターが志向する絵や仕事のスタイルによっても違います。もちろん人間関係の違いがそれを決定づけることも珍しくありません。そして現在はとてもじゃないですが「どちらの世界」で割切れるほど、イラストレーターという職業の幅は狭くないのです。

このような仕事上の経験を経て、知らず知らずのうちにイラストレーター各々の中にハビトゥスが形成され、志向の近いもの同士がグループ化します。「イラストレーター」という職業についての認識も他のグループとは違うものになっていきます。それにともない社会からの認知や要請も多様化し、同じ肩書きでもまったく違うビジネススタイルになっていくというわけです。しいて共通点をあげれば「絵を描いている」ということぐらいでしょうか。こうした傾向はなにもこの世界に限ったことではありませんよね。

かくしてイラストレーターの意味は広がりました。最低限絵を描いていれば誰でもそう名乗る自由があります。さてこの展覧会のメンバーを見渡しますと、「イラストレーター」の前提にそれほど認識の違いはなさそうです。あるとすれば「イラストレーション」の方かな。こちらに対する考え方の違いはけっこうありそうなので、それを念頭に置いて観ていただけると面白いんじゃないでしょうか。以上「イラストレーターの仕事シリーズ」という副題があったので、そのことについて偉そうに書いてみました。

会期:2008年12月5日(金)~12月24日(水)
会場:ペーターズギャラリー 地図
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